株式市場で「知的財産(IP、以下知財)」関連株が買われています。QUICKが選定する関連銘柄の平均上昇率は6.8%と、東証株価指数(TOPIX、2.6%)を上回りました(7月3日までの5営業日の騰落)。株価が上昇した5銘柄とその背景について解説します。
経産省の支援など多くの個別材料が手掛かり
IP関連株が上昇したきっかけは、複数の要因と好材料です。
6月下旬、知財関連企業に対して、経済産業省が支援を進める大規模補助金制度「IP360(コンテンツ産業成長投資支援事業)」への採択が発表されました。
対象は、アニメやゲーム、映画など幅広いコンテンツ企業です。成長投資を通じて国内コンテンツの海外での売り上げ拡大を目指すもので、今後の成長に対する期待が高まりました。
また、知財関連企業を巡っては、自社株買い、投資ファンドによる保有株の上昇、有名ゲームタイトルの発売前倒しなどの個別材料の発表なども重なり、注目が集まりました。
株式市場では、これまで相場をけん引してきたAI(人工知能)・半導体関連企業の成長に対する過度な期待が後退し株価上昇が一服。知財関連株は、出遅れ株やAI以外のテーマ株を物色する流れに乗った側面もあるようです。
自社株買いで大幅上昇【ブシロード】
上昇率首位となった「 ブシロード 」は、トレーディングカードゲームの企画・販売を祖業とする総合エンターテインメント企業です。トレカを皮切りに、アニメやスマートフォンゲーム、さらにはプロレスなど幅広い事業を展開しています。トレーディングカード「ヴァイスシュヴァルツ」やスマートフォンゲーム「BanG Dream !(バンドリ!)」などの作品で知られ、多様な有力IPを生かし、グループ全体でのプロモーション展開に注力しています。
6月30日の取引終了後、発行済み株式総数(自己株式を除く)の5.89%にあたる800万株、総額20億円を上限とする自己株式の取得を発表しました。自己株式取得による株主還元や需給改善への期待から買いが集まり、株価の大幅な上昇につながりました。
新サービスの発表や連れ高も【サイバーエージェント】
上昇率2位となった「 サイバーエージェント 」は、インターネット広告事業を主力とするIT(情報技術)企業です。近年はインターネットテレビ「ABEMA(アベマ)」を起点としたメディア・IP事業やゲーム事業が、収益に大きく貢献しています。アニメやゲーム、ドラマ制作などのオリジナルIP創出に注力しており、スマートフォン向けゲーム「ウマ娘 プリティーダービー」などのヒット作で知られています。5月には、京都にアニメ・ゲーム分野のクリエイターを育成する新たな拠点を設立すると発表しました。次世代クリエイターの育成や制作体制の強化を目指しています。
6月29日、AIがユーザーの声を収集・分析するインタビューツール「N1AI」のサービス開始が材料視され株価が上昇、その後も知財関連株物色の流れに乗ったようです。
投資ファンドの株式保有増加や新作発表の前倒しも
「 ディー・エヌ・エー(DeNA) 」は、実業家として知られる南場智子氏が1999年に創業した企業です。ゲームポータルサイト「モバゲー(Mobage)」のヒットにより、日本のソーシャルゲーム業界をけん引してきた存在として知られています。近年では、人気IP「ポケットモンスター」を題材にしたスマホ向けゲーム「Pokémon Trading Card Game Pocket(ポケポケ)」が大ヒットを記録しました。
前週末から週初にかけて、経済産業省による同社スマホゲーム開発への総額15億円を補助との報道や、大規模補助金制度「IP360」への採択決定の発表を受け、株価が上昇。7月2日には、旧村上ファンド系の投資会社、シティインデックスイレブンスなどが同社株を5%以上保有していることが明らかとなったことを受け一段高となりました。
「 カプコン 」は、大阪発祥のゲームソフトメーカーです。家庭用ゲームソフトにおいて国内有数の開発力を誇り、「バイオハザード」や「モンスターハンター」などの人気シリーズは海外でも高く評価されています。
7月2日には人気シリーズ「鬼武者」の最新作を3週間前倒しで発売すると発表。これにより、27年3月期の業績への貢献が大きくなるとの期待が高まり、投資家からの買いを集めました。
「 IGポート 」は、アニメ「攻殻機動隊」シリーズを手掛ける制作会社「Production I.G」や、アニメ「進撃の巨人」などを制作した「WIT STUDIO」を傘下に持つ持ち株会社です。同社は、経済産業省の「IP360」支援企業に採択されています。
「成長の要」として国を挙げ支援 「骨太」原案に指針
アニメやゲームなどを始めとした日本のコンテンツは、政府が重点投資すると表明している「17の戦略分野」の一つとして明記されています。
政府が6月30日に発表した「経済財政運営と改革の基本方針2026(骨太の方針)」の原案にも、知的財産の保護や活用を通じたクールジャパン戦略の推進など、国を挙げた成長の要としてあらためて位置づけられました。
政府は日本発コンテンツの海外市場規模を2033年までに20兆円へと拡大する目標を掲げており、過去にも政府がコンテンツビジネスを基幹産業と位置付ける新たな方針を発表した際には関連銘柄が物色されました(『クールな成長ビジネス 「コンテンツ」関連株が上昇』)。
世界的に引き合いの強い有望なIPを多数保有し、今後の市場規模の拡大が期待される関連銘柄は、今後も中長期的な将来の成長に大きな期待が持てそうです。