AI(人工知能)が人の買い物を代行する「エージェントコマース」が進化しています。取引機能のインフラを開発するマスターカードを中心に各社の動向をご紹介します。
マスターカードがエージェントコマースの基盤発表
今年6月、マスターカード(MA)は、エージェントコマースで人に代わって買い物をするAI(AIエージェント)の技術基盤「Agent Pay for Machines(エージェント・ペイ・フォー・マシーンズ、AP4M)」を発表しました。これにより、AIエージェント同士が常時接続され超高速の決済が実現します。
エージェントコマースとは、AIエージェントが一連の購買行動を支援・代行する仕組みです。AIが消費者(ユーザー)の指示や行動履歴、嗜好データなどをもとに意図を理解し、商品の検索・比較・購入します。
利用上限額など細かいルール設定を事前にプログラム管理しておくことで、AIが人間の代理人として商品の購入や決済を自律的に行います。
認証機能の強化やデジタル通貨の採用を含む決済手段の多様化により、エージェントコマースはBtoC(消費者向け)からBtoB(企業間取引)領域にも対象が拡大してきています。
エージェントコマースとは?
・AIエージェントが消費者の意図を理解し、購買行動を支援・代行する仕組み
・プログラム管理しておくことで、AIが商品の購入や決済を自律的に行う
・決済手段の多様化でBtoC(消費者向け)からBtoB(企業間取引)にも対象が拡大
電子商取引(EC)では、クレジットカードなどによる決済の際、最終的に人間が確認ボタンを押したり、認証コードを入力したりする必要があります。
マスターカードは昨年4月、この制約を解決するサービスとして「Agent Pay(エージェントペイ)」を発表。
今回のAP4Mでは、企業間取引(BtoB)や機械間取引(M2M)にまでその対象を拡大。AI同士が24時間365日、超高速で大量の決済を自動でできるようになりました。
ビザはOpenAIと提携しエージェントコマースを展開
AIが企業やシステム同士の取引を安定的かつ継続的に行える決済インフラを整備したことで、ビジネスシーンにおけるAIエージェントの活躍の場はさらに広がりをみせそうです。
ビザ(V)は、エージェントコマース向けに「Visa Intelligent Commerce(ビザ・インテリジェント・コマース)」を提供しています。
6月にはOpenAIとの戦略的提携を発表。ビザのグローバル決済ネットワークや認証機能、不正検知システムなどをOpenAIに提供し、ChatGPTのAIエージェント機能が利用者に代わって商品購入や決済を行えるようにしました。
エージェントコマースを支える認証機能や決済手段の多様化
エージェントコマースでは、不正利用の防止や決済手段の多様化が欠かせません。
クラウドフレア(NET)は、マスターカードやビザなどと提携し、AIが本物のユーザーに代わって決済していることを証明する認証機能を提供しています。
AIにデジタル証明書を付与することで、信頼できるAIエージェントや悪意のあるボットを区別し、安全かつ信頼性の高いエージェントコマースの実現につなげます。
コインベース・グローバル(COIN)は、決済インフラを暗号資産(仮想通貨)やブロックチェーンなどの技術面から支える企業の一つとしてAP4Mに参画しています。
AIエージェントが1日に大量の取引を行う場合の決済手段として、従来の銀行システムを利用するよりも手数料が低く抑えられるステーブルコイン(=ドルや円などの既存の法定通貨と同等の価値を保つよう設計されたデジタル通貨)の相性が良いとされます。コインベースはデジタル通貨に関する標準規格の開発やインフラ構築で協力します。
ショッピファイ(SHOP)は1月、グーグルと共同でAIエージェントがオンラインショップの商品を検索・閲覧し、決済までスムーズに完了できるようにするための共通規格「Universal Commerce Protocol(ユニバーサル・コマース・プロトコル、UCP)」を発表しました。
ショッピファイの加盟店はグーグル検索や生成AIサービス「Gemini(ジェミニ)」のAIモード内で直接商品を販売できるようになるほか、マイクロソフト(MSFT)の「Copilot(コパイロット)」など主要AIチャットとの連携も強化し、世界中の購入者と加盟店をつなぐ仕組みづくりを強化します。
未知の分野だけに安全面などの課題も多そうですが、エージェントコマースには果てしない成長の可能性が広がっています。