生成AI(人工知能)の台頭をきっかけに、急速に私たちの社会に浸透してきたAI。今度は人間に似た体を持つ「ヒューマノイド(ヒト型ロボット)」として生産現場に活躍の場を広げようとしています。三菱自動車工業を中心に各社の動向をご紹介します。
三菱自動車、ヒト型ロボットの量産化を発表
「 三菱自動車工業 」は7月、東京大学発スタートアップで国産人型ロボットを開発するHighlanders(ハイランダーズ)と協業することで基本合意したと発表しました。
具体的には同社の工場で活用するヒューマノイドロボットの共同開発を進めるほか、京都製作所京都工場でハイランダーズの製品を量産化することを計画。人型ロボットを単に「使う」だけでなく、「作る」役目も一緒に担うことが今回の連携の特徴です。
同社がヒューマノイドに参入する背景には、自動車の製造工程での作業の効率化や精度向上を進める狙いがあります。ハイランダーズと共同開発することで、実際の作業現場でのデータの蓄積やソフトウエア更新によりロボットの性能を最適化できるようになります。
これまでの自動車製造で培った技術や供給網を生かしてヒューマノイドを生産し、将来的には外部にも提供することで新たな成長事業に育成しようとしています。
頭脳を持ったロボットに広がる活躍の場
近年の世界的な人手不足やAI技術の向上を背景に、ヒューマノイド市場は今後、飛躍的に拡大すると期待されています。
従来の産業用ロボットは、あらかじめ組み込まれたプログラムに沿った単純作業を繰り返すことしかできず、作業工程を変える際には逐一、組み込みソフトを更新する必要がありました。
しかし、現在は生成AIなどの活用によって、人の指示を理解したり、周囲の状況に応じて判断したりする「頭脳」をロボットに持たせることが可能になりました。人間と同じような体格や手足を持つヒューマノイドは、人間が働くことを前提に設計された工場や施設といった場所でも順応しやすく、人とも協働しやすいという特徴もあります。
今後、製造現場を含むあらゆる分野でヒューマノイドの活躍の場が広がりそうです。
ヒューマノイド(ヒト型ロボット)とは
・人間に似せて作られたロボット
・労働力不足が深刻化するなかで人の作業を代替する存在として期待
・人と同じ形を持つため、環境や業務プロセスの変更が少なく済む
・生成AIなどの活用で自律的に判断をして作業できる
・これまで自動化が難しいとみられていた作業でも自動化が可能に
ヒューマノイド関連製品の開発も
「 川崎重工業 」はヒューマノイド「Kaleido」の開発に2015年から着手し、現在は9世代目「Kaleido9」まで改良を進めてきました。
「人間の世界にロボットを合わせる」の発想でアップデートを繰り返し、Kaleido9は前世代に比べて倒れにくさや自律歩行などの性能を向上させました。同社は災害現場での活用などを見据え、今後も開発を継続します。
「 THK 」はヒューマノイド「FRED(フレッド)」を開発しています。
名前の由来は「Flexible(柔軟)Robust(頑丈)Engineering Design(工学的設計)」の頭文字で、身体性能の高さが特徴です。25年5月の走行実験では世界最高水準の走行速度を実現しました。
部品メーカーでもヒューマノイド向けの製品開発を加速しています。
「 ミネベアミツミ 」はベアリングやモーター、センサーなどの精密関連製品を幅広く手掛け、人型ロボットの進化を支えています。
「 日本精工 」は、ヒューマノイド向けを想定したアクチュエーター(駆動装置)を開発しました。
アクチュエーターは電気などのエネルギーを実際の動きに変える装置で、いわばヒューマノイドのしなやかな動きを左右する「筋肉」のような役目を果たします。 同社は顧客ニーズを見極め、2028年の市場投入を計画しています。
ヒューマノイド関連が将来の成長事業の1つとして本格的に立ち上がる日はそう遠くないかもしれません。