スペースXはいつ入る? IPO銘柄の指数採用ルールとは

あなたの知らない「インデックスの世界」/ さかえだいくこ(おせちーず)須山 奈津希

「『商品』のインデックス CRB指数」を読む

ニュースでよく耳にするものの、よくわかっていないインデックスについてお伝えする本連載。今回のテーマは、「IPOで上場した銘柄がいつインデックスに採用されるか」です。

巨大IPO株「スペースX」が上場

2026年6月12日、米国ナスダック市場にスペースX(ティッカー:SPCX)が新規に上場しました。新規上場のことを英語ではInitial Public Offeringといい、略してIPOと呼ばれます。

スペースXは1株135ドルで投資家を募集し、6月12日は160.95ドルで取引を終え、その時価総額は2.1兆ドルになりました。1ドル=160円で計算すると約336兆円で、日本株になぞらえるとプライム市場の時価総額上位10社合計に匹敵する規模です。2026年は他にも大型のIPOが見込まれており、IPOという言葉を耳にする機会が多くなりそうです。さて、本連載のテーマは「インデックス」です。IPOとインデックス、関係がなさそうに見えて、実は非常に大事な関係があるのです。

S&P500、全世界株式指数、ナスダック100に共通する性質

冒頭で米国株であるスペースXのIPOを引き合いに出しましたので、外国株式が採用されている株式インデックスについて考察することにします。

さて、読者の皆さんに思い出してほしいことがあります。本連載ですでにご紹介してきたS&P500、全世界株式指数(MSCI ACWI)、ナスダック100に共通する性質は何でしょうか? 答えは「時価総額加重平均型株式指数」であることです。

簡単にいえば時価総額=発行済株式数×株価の値が大きい銘柄ほどインデックスに占める割合が高くなることを意味しています。もう少し詳しく知りたい方は本連載の第2回「『単純平均』と『加重平均』って何が違うの?」を参照してください。

スペースXは6月12日の終値ベースで、その時価総額が全世界の株式で上位10位以内にランクインしました。時価総額がとても大きいわけだから、S&P500や全世界株式指数、ナスダック100といったインデックスにおいてもすでに採用されているんだよねと思われるかもしれませんが、実はそうではありません。しかも、インデックスによって新たな銘柄採用のルールが異なります。一つ一つ確認しましょう。

全世界株式指数 MSCI ACWI

最初に確認するのは全世界株式指数MSCIオールカントリーワールドインデックスです。「オルカン」と言えばこのインデックスを意味することが多いようです。「オルカン」は世界47ヵ国の株式市場の時価総額全体のうち約85%をカバーするよう、銘柄選定が実施されます。

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IPOされた銘柄については、2007年のルール変更で、その銘柄の時価総額や取引できる株式数等がオルカン採用の基準を満たせば、最短で上場日から10営業日後に算出対象として採用されることになっています。

銘柄採用ルールを変えたナスダック100

ナスダックは世界最大の新興企業向け市場です。日本にいても耳にする機会が多いアップルマイクロソフトエヌビディアテスラアマゾン・ドット・コムスターバックスはもはや「新興企業」ではないようにも思えますが、現在もナスダックに上場しています。冒頭で触れたスペースXもナスダックに上場しました。ナスダック100は、アメリカのナスダック市場に上場している金融株を除いた時価総額の大きい上位100社で構成されるインデックスです。

IPOされた銘柄がナスダック100に採用されるまでにはIPO後3ヵ月から14ヵ月程度の時間が必要でしたが、2026年5月1日にこのルールを変更し、時価総額で上位40以内の銘柄は上場日から15営業日後から採用することが可能になりました。このような早期採用のことは”ファストトラック”と呼ばれています。

S&P500はルールを変えなかった

さて、最後にS&P500です。S&P500の銘柄採用ルールにはいわゆる「オルカン」やナスダック100と明らかな違いが三つあります。一つは米国企業であることです。「オルカン」は全世界株式指数ですから、様々な国の株式で構成されていることは言わずもがなですが、ナスダックには他国の銘柄も上場しているので、時価総額ランキングで採用銘柄が決まるナスダック100にも米国以外の企業の銘柄が採用されています。二つ目は、四半期連続でEPS(1株当たり純利益)が黒字であることです。つまり赤字企業はS&P500に採用されません。三つ目は、上場後12ヵ月を経過していることです

S&P500を算出している、S&P Dow Jones Indicesは2026年に想定される大型のIPO銘柄を想定して、S&P500をはじめとした算出しているインデックスのルールを変更することについての意見募集を2026年4月30日~5月28日まで実施しました。上場後最低12ヵ月という期間を6ヵ月にする、時価総額が大きい銘柄については黒字企業であるという条件を満たさなくてもよい、といった変更案を提示し、意見を募りました。

意見募集の終了後、6月4日に同社は、銘柄採用ルールに変更を加えないと発表しました。つまり、S&P500についてはナスダック100の“ファストトラック”のような銘柄採用を行わないということです。よって冒頭で言及したスペースXがS&P500に採用されるのは最短で2027年夏ごろとなります。

テスラも時間がかかった

これまでにも、時価総額が大きいだけではS&P500に採用されないんだ、と認識させてくれる歴史がありました。

米国の電気自動車メーカー・テスラは2010年にナスダックに上場しましたが、S&P500に採用されたのは2020年12月でした。2020年に株価が大きく上昇し、米国株の時価総額ランキング上位の常連になりましたが、2019年第2四半期までEPSがマイナスでした。その後2019年第3四半期からはEPSがプラスになり、そのプラスが4四半期続いたのち、2020年12月の銘柄入れ替えでS&P500に採用されたという経緯を歩んでいます。簡単にはS&P500に採用されないんだと教えてくれているような経緯です。冒頭でご紹介したスペースXは直近2四半期のEPSがマイナスです。S&P500の銘柄採用ルールが変わらなければ、これからの1年間の業績が最短でのS&P500への採用を左右する大きな要件になります。四半期ごとの決算発表に注目してみてください。一方、S&P500に採用されることになれば、それはS&P500に連動するETFや投資信託がスペースXを買う機会になるわけですから、大きな買い需要になります。いつになるかわかりませんが、そんな買い需要が来る日を待ちながらスペースX株と付き合うのも夢があるかもしれませんね。