地震や台風、豪雨。災害の多い日本では、もしものときに備えながら、ふだんの暮らしを守る工夫が欠かせません。その役割を担うのが「レジリエンス」です。建物、エネルギー、気象情報、物流ーーさまざまな企業が、災害に強い社会を支える取り組みを進めています。
「もしもに強い社会へ。未来へつなぐレジリエンス【前編】」を読む
もしもの揺れに耐える建物の技術
建築分野では、耐震・制震・免震という3つのアプローチを組み合わせることで、高度な防災性能を実現しています。「 鹿島建設 」は、超高層建築向けの制震構造をいち早く確立した企業として、長周期地震動にも対応できる高い技術力を持っています。同社独自の制震装置「HiDAXダンパー」は、地震エネルギーを利用して建物の揺れを抑える世界初の技術です。
この技術は、風揺れから震度7クラスの大地震まで幅広く対応できます。なかでも頻度の高い震度4~5クラスの地震や、継続時間の長い長周期地震動において、特に効果を発揮します。地震エネルギーを効率的に吸収して建物の損傷を抑え、地震後も継続利用できる状態を維持します。これにより、建物の長寿命化や修繕負担の低減にもつながります。こうした技術は、持続可能な都市づくりを支える重要な基盤です。災害リスクの高まりを背景に、その重要性は今後さらに高まると考えられます。

HiDAX®-R(ハイダックス アール)
HiDAX-Rは、東京ミッドタウン日比谷で導入され、耐震性と事業継続計画(BCP)対応に寄与しています。

東京ミッドタウン日比谷
東日本大震災以降、戸建て住宅でも繰り返し発生する大きな揺れに耐え続ける性能が強く求められるようになりました。「 大和ハウス工業 」は、「地震に備える」だけでなく「住み続けられる性能」を重視。この観点から持続型耐震技術「D‑NΣQST(ディーネクスト)」を開発しました。
この技術は、Σ(シグマ)形デバイスという部材が地震時にしなやかに変形することでエネルギーを吸収するもので、繰り返しの揺れに対しても初期性能を維持します。住まいの性能を長期間にわたって維持できることは、住宅の資産価値や居住の安心感を高める要素となります。この技術は今後の住宅市場で他社との差別化につながる重要な技術といえるでしょう。

「Σ」デバイスが地震のエネルギーを効果的に吸収
地震発生時に「Σデバイス」が上下しなやかに動くことで地震のエネルギーを吸収する仕組みになっています。

「Σデバイス」を組み合わせた耐力壁「D-NΣQST」の仕組み

「D-NΣQST」を標準搭載した鉄筋系戸建て住宅の代表ブランドXEVOΣ(ジーヴォシグマ)
停電時も暮らしを支えるエネルギーの備え
住宅のレジリエンスを高めるうえで、構造性能と並んで重要なのがエネルギーの自立性です。近年は停電対策として家庭用蓄電池の導入が広がっており、国や自治体の補助制度もその普及を後押ししています。「 ニチコン 」は蓄電池分野で高いシェアを持つ企業で、太陽光発電・蓄電池・EVを連携させる「トライブリッドシステム」を展開しています。発電・蓄電・消費を効率的に制御することで自家消費率を高め、停電時にも住宅全体へ電力供給が可能です。
ニチコンの「トライブリッド蓄電システム®」は、太陽光発電と蓄電池、EVの3つのエネルギーを直流のまま効率よく制御する、同社が世界で初めて開発したシステムです。脱炭素と防災を両立するこうしたソリューションは、エネルギー転換の進展とともに、今後さらに需要の拡大が見込まれます。

もしもの停電時は自動で切り替え(「停電時出力」を「自動」に設定した場合)

災害時も家族の暮らしを守る!在宅避難でもいつもの暮らしを
災害を予測し、物流を止めない仕組み
また、災害への備えにおいては、「予測と判断力」の高度化も不可欠です。「 ウェザーニューズ 」は、全国約1万3000地点の観測網、ユーザーからのリポート、AI解析を活用し、高精度な気象情報を提供しています。自治体向けサービスでは、72時間先までの気象リスクを可視化できるほか、雨量や河川水位をリアルタイムで把握できる仕組みを備えていて、避難所の開設や人員配置などの意思決定を支援します。
さらに、「体制判断」と「実況監視」により、設定した基準値を超える雨量や河川水位の変動、予測される雨・風のリスクレベルの変化を即座に把握できます。これにより、経験だけに頼らない迅速な災害対応と業務負担の軽減が可能になります。昼夜を問わずスマートフォンでも危機状況を確認できる点も、大きな強みです。災害対応を「事後」から「事前」へと転換する流れの中で、こうした情報インフラの役割は今後さらに高まっていくと考えられます。

自治体支援に特化した「ウェザーニュース for business」

「実況監視」で雨量をグラフ形式で確認

「実況監視」で河川水位をマップ上で確認
こうした予測情報は、実際の災害対応を担う物流インフラとも密接に結びついています。災害時に物流が滞ると、生活基盤や地域経済に深刻な影響を及ぼします。「 ヤマトホールディングス 」は物流を社会インフラと位置付け、平時から自治体と連携し、発災時には生活必需品を迅速に届ける体制を整備しています。
全国約2800拠点(集配拠点数)のネットワークを活用し、被災していない地域から代替輸送を行うことで、物流機能の維持を図っています。
東日本大震災では、自治体や自衛隊と連携して支援物資を避難所へ届け、宅配機能の早期再開にも貢献しました。さらに、能登半島地震では仮設拠点を迅速に立ち上げるとともに、再生可能エネルギー設備を備えた拠点として再構築を進めています。災害対応力の強化は、物流企業にとって重要な競争力の一つとなっています。

瓦礫の中徐々に配達を再開、東日本大震災(2011年)
レジリエンス、「もしも」の先へ未来をつなぐ
このように、レジリエンス関連分野は幅広い産業にまたがる投資テーマです。災害リスクの高い日本において、社会の持続性を支えるこれらの技術やサービスは、今後も重要性を増していくでしょう。企業のレジリエンス対応を知ることは、中長期的な投資機会を考える上でも重要な視点となります。
「もしもに強い社会へ。未来へつなぐレジリエンス【前編】」についてもっと知りたいという方は、こちらの記事もご覧ください。