上質な体験が市場を動かす! 高くても選ばれる理由とは?

テーマで横ぐし!世界の会社を見てみよう/ 日興フロッギー編集部スタジヲ タケウマ

旬な投資テーマをもとに、関連する国内外の企業をまとめて紹介する本連載。今回のテーマは「上質な体験への消費」です。旅行やレジャーを中心に、価格が高くても選ばれる体験の世界をのぞいてみましょう。

世界情勢に不安も旅行人気は衰えず

コロナ禍が落ち着いたあと、世界では旅行やレジャーを楽しむ人が増えています。WTTC(世界旅行ツーリズム協議会)によると、2025年の世界の旅行・ツーリズムGDPは前年比4.1%増の11.6兆ドルとなり、新型コロナウイルスが広がる前の2019年を上回る規模になりました。景気の先行きへの不安や物価上昇が続く中でも、旅行需要は底堅く推移しています

その背景には、人々の収入が増えたことに加え、旅行やレジャーなどの「体験」に価値を感じる人が増えていることがあります。中東情勢の悪化や物価上昇といった不安材料はあるものの、旅行する人が大きく減るとの見方は今のところ広がっていません。WTTCは2036年の同GDPを17.1兆ドル、2026~2036年の年平均成長率は3.6%になると予想しています。

旅行市場で広がる消費の二極化

旅行需要は引き続き堅調と見られていますが、所得水準によって旅行へのお金の使い方には差が広がっています。航空会社は燃料費や人件費の上昇を航空券の価格などに反映していますが、その影響は比較的価格の安いサービスで大きく、高価格帯のサービスへの需要は底堅いとされています。

デロイト(世界的なコンサルティング会社)の調査によると、米国では、今夏に有料宿泊を伴う夏休み旅行を計画している人の割合が45%と、過去6年で最も低い水準となりました。一方で、旅行に使う予定額は増えており、富裕層による消費が市場を支えていることがうかがえます。旅行にお金を使う人たちの間では、体験の質や快適さを重視する傾向も見られます。

こうした旅行市場の変化の中でも、高価格帯の旅行やレジャーへの需要は引き続き堅調です。その代表例の一つがクルーズ旅行でしょう。米クルーズ会社のバイキング・ホールディングスは高級路線に特化しており、宿泊料金は競合他社の2~3倍とされています。それでも2026年シーズンの予約は9割以上が埋まっており、現在は2027年シーズンの販売に力を入れています。

ホテル業界でも同様の傾向が見られます。低価格帯のホテル需要が伸び悩む一方で、高級ホテルの需要は引き続き好調です。マリオット・インターナショナルヒルトン・ワールドワイド・ホールディングスでは、高価格帯のホテルが客室の3~5割を占めており、こうした需要を取り込んでいます。

また、これらの企業はホテルを多く所有するのではなく、運営やブランド提供を通じて収益を上げる仕組みを採用しています。さらに、多くの会員を抱えていることも強みで、高い利益率を維持しています。

日本でもインバウンド消費が続く

こうした富裕層を中心とする需要は、米国企業だけでなく、円安や訪日需要の恩恵を受ける日本企業にも広がっています。

2026年6月の訪日客数は315万人(前年同月比−6.8%)となりましたが、中国の渡航自粛の影響があった一方で、韓国・台湾・米国など15の国・地域では6月として過去最高を記録しました。4~6月期の訪日外国人旅行消費額も2兆5096億円(前年同期比+0.2%)と高い水準を維持しています。円安によって海外から見ると日本での旅行や買い物が割安になっていることもあり、「安い日本」でのインバウンド消費が続いています

こうした訪日客による消費拡大の恩恵を受ける企業として、「 セイコーグループ 」や「 三越伊勢丹HD 」が挙げられます。これらの企業は、インバウンド需要に加え、高価格帯の商品やサービスを求める富裕層の需要も取り込んでいます。

日本でも海外でも、高価格帯の旅行やサービスを求める人たちが市場を支える傾向が見られます。今後も、高価格であっても利用者が価値を感じる商品やサービスを提供できる企業に注目が集まりそうです。