国産AI開発が加速 日本の『 現場力 』を『 競争力 』に

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AI(人工知能)の開発競争が過熱化する中、日本の産業や社会に適応したAIとして、国産AIにも注目が集まっています。今回は、国産AI基盤の研究開発に臨むソフトバンクを中心に各社の動向をご紹介します。

国産AI基盤開発の「Noetra(ノエトラ)」始動

今年7月、「 ソフトバンク 」や「 ソニーグループ 」を中核企業とするAI開発会社「Noetra(ノエトラ)」が本格始動しました。44社が出資し、AIロボットやフィジカルAIの「頭脳」となる基盤モデルの開発を進めます。

Noetraの狙いは、日本の企業が培ってきた貴重なデータや知見を活用し、日本の産業や社会にマッチした「頭脳」を育てることです。日本の工場などの製造現場には、長年のモノづくりの中で蓄積された独自のノウハウに関する膨大なデータが存在します。

AIが自律的に判断して行動するフィジカルAIにとって、こうしたデータは重要な資源になります。このような資源を活用するうえで、文章や画像、音声など大量のデータを学習し、さまざまなAIサービスの土台となる基盤モデルは非常に重要です。

Noetraは2026年度より順次、高度な日本語理解や指示遂行能力を備えた推論基盤モデルを構築します。30年度には空間認識などの物理特性を理解し、実社会での活用実現を目指します。

さらに、開発したモデルは、研究開発や社会実装の状況を踏まえて外部提供・公開を順次進める予定です。学習済みの基盤を国内のモデル開発者や利活用事業者に広く提供し、領域特化モデルなどの開発・活用を後押しします。

ソフトバンクは、全国規模の通信基盤や、自社の国産生成AI「Sarashina」の開発で培った人材・技術など、AIを支える強みを持ちます。これらをNoetraの取り組みに生かし、国産AIの開発から社会実装までを支える存在を目指しています。

基盤モデルの海外企業依存リスクを抑制

国産AIの開発が加速する背景の1つに、海外企業への依存リスクを抑える狙いがあります。

経済や産業、社会インフラなどにAIが組み込まれるなか、重要なAI基盤技術やサービスを海外企業に過度に依存すると、自由なアクセスが制限された場合にリスクとなります。加えて国内でAI基盤を開発・運用することで、機密情報や産業データを国内で管理しやすくなるメリットもあります。

国内で基盤モデルの開発をすることで、国内製造業の生産性向上や競争力強化につながることも期待できます。

日本語特有の表現や文化、商習慣など、日本独自の使用環境に対応したAIの需要もあります。日本の産業現場で蓄積されたデータやノウハウを安全にAIに学習させ、活用できれば国内産業の競争力向上につながると考えられます。

国産AIが注目される4つの理由
・日本企業が培ってきたデータや知見を活用した日本独自の「頭脳」が必要
・AIが社会インフラの基盤になっていく中、過度な海外依存のリスクを回避
・国内製造業の生産性向上や競争力強化につながる可能性が高まることへの期待
・現場データを守りながら活用できる国産のAI基盤の重要性が高まる

参画企業は自社の強みとAIを組み合わせる

Noetraに参画する企業では、具体的な国産AI基盤モデルの自社活用に向けた検討も進んでいます。

「 オムロン 」は、製造やヘルスケア、社会システムなどの領域で、同社が保有する高品質な一次データや運用知見にNoetraの基盤モデルを組み合わせ、予兆検知や自律運用を実現する独自のAI活用基盤の構築を目指しています。

「 DMG森精機 」は、安全保障や輸出管理など機密性の高い業務への活用に加え、製造現場に蓄積された言語化しにくい暗黙知のデジタル化の実現に期待を寄せています。

国産AIを『つくる』動きから『広げる』動きへ

国産AIの普及に向けた動きは多方面に広がっています。

Sakana AI(サカナAI)は日本発のAI企業で、海外の先端モデルに匹敵するとされる高性能AIの開発を強みとしています。

AI導入支援の実績を持つSCSKと「 住友商事 」グループが持つ10万社の顧客網を生かし、大企業から中小企業まで幅広い企業への導入支援を進めます。

住友商事は、子会社のSCSKとAI開発のSakana AIと提携し、3社で生成AIの導入支援を始めています。

「 NTT 」は日本語に特化した大規模言語モデル(LLM)「tsuzumi 2(つづみ2)」を提供 しています。日本国内でデータセンターからAIモデルまで自社で手掛ける体制を整えており、経済安全保障の観点から自国内でデータ管理をしたい事業者へのニーズに対応しています。

国産AIの開発は、企業連合による基盤づくりの段階に入りました。

今後の焦点は、開発したAIを工場や物流、医療などの現場に実装し、生産性向上や新しいサービスにつなげられるかです。

日本企業が持つ現場データと、通信・計算基盤を提供するソフトバンクなどの技術が結び付けば、日本の産業競争力を高める可能性があります。

国産AI開発が加速する中、日本の『 現場力 』を『 競争力 』に変えられるか。各社の取り組みに注目です。