ニュースでよく耳にするものの、よくわかっていないインデックスについてお伝えする本連載。今回のテーマは、日本で一番名が通った株式インデックスのルールが実はひっそりと変わっていた、という事実です。
日経平均株価のルールが変わった
2023年10月に始まった本連載が、今回で3周年を迎えました。インデックスをテーマに扱うため、ネタがすぐに出し尽くしそうと思っていたのですが、そんなことはなく今日を迎えられたのには理由があります。インデックスそのものが増えるだけではなく、インデックス自身も変化するからです。
本連載の1回目のテーマは「日経平均株価ってどうやって計算している?」でした。連載1回目で日経平均株価を題材にしたのは、読者の皆さんに馴染み深く、また日本で最も名が通った株式インデックスという理由からです。その日経平均株価のルールに今年変化があったことをご存知でしょうか?
「セクター」が増えた
2026年7月9日に日本経済新聞社は「日経平均株価の算出要領および構成銘柄選定基準の改定について」というリリースを出しました。このリリースで発表されたことの一つが「セクター」の追加です。その変化を確認しましょう。
主な変化は2点です。「技術」セクターから「通信」が独立して「情報通信」セクターができました。同時に業種分類も「通信」から「情報通信」に名称が変更され、「サービス」業種の一部の銘柄の業種が「情報通信」に変更されています。また、業種分類「医薬品」が「技術」セクターから「消費」セクターに“移籍”しました。
今回の変更は、東証プライム市場の産業構成の変化を、日経平均株価にも反映させたいという狙いがあると考えられます。本連載の1回目でも、「セクター」や「業種」による採用銘柄数の偏りを指摘しました。日経平均株価が銘柄選定で重視する「流動性」とは、株式市場でどれだけ活発に取引されているかを示すものです。売買の活発さには、その時々の投資家の関心が反映されます。そのため、流動性を重視して銘柄を選べば、成長産業や注目を集める企業が採用されやすくなり、結果として特定のセクターや業種に銘柄が偏ることもあります。つまり、これまでの業種の偏りは、流動性を重視する日経平均株価の銘柄選定の結果として、ある程度避けにくいものだったと考えられます。
「セクター内入れ替えルール」の導入
もう一つのルール変更は「セクター内入れ替えルール」が導入されたことです。次の手順で判定されます。
2)順位差が最大となったセクターにおいて、既採用銘柄のうち市場流動性順位が最も低い銘柄を除外し、同セクターの未採用銘柄のうち市場流動性順位が最も高い銘柄を採用する
これに伴い、日経平均株価採用銘柄の選定手順は、4ステップから5ステップになりました。
従来のルールでは、構成銘柄数がすでに多いセクターの場合、市場流動性が300位程度の未採用銘柄は、75位以内に入らないかぎり採用されません。一方、同じセクターに市場流動性が420位の既採用銘柄があっても、除外されないことがありました。今回のルールには、こうした不整合を解消する意図があると考えられます。
以上2点のルール変更は日本の産業構造の変化やマーケットにおける位置づけを日経平均株価に反映させようという意図によるものだと筆者は解釈しています。ルール変更は2026年10月1日から効力を発生しています。
2026年10月の定期見直しによる銘柄入れ替え
2026年9月4日にルール変更にもとづいた定期見直しによる銘柄入れ替えが発表されました。
JX金属
KOKUSAI ELECTRIC
カプコン
コニカミノルタ
ARCHION
カナデビア
ARCHIONという銘柄は見慣れないかもしれません。日野自動車と三菱ふそうトラック・バスの経営統合によって2026年4月に誕生した持株会社です。日野自動車は日経平均株価に採用されていた銘柄でしたが、経営統合に伴い2026年3月30日で上場廃止されたため除外され、新たに上場したARCHIONが日経平均株価に採用されたという経緯です。2026年10月の定期見直しによる銘柄入れ替えにおいては、セクター間の銘柄数調整の対象となりました。
採用銘柄は日経平均株価連動資金の買いの対象、除外銘柄は売りの対象になりますが、概して言えば、「除外」銘柄の方が株価への短期的な影響が大きい傾向があります。今回、コニカミノルタは除外発表の翌営業日から3営業日で−14%の大きな下げになりました。このように株式インデックスの構成銘柄の変化は個別株の株価を動かす要因になります。インデックスの動向を知ることが、個別株投資の情報収集にもつながる良い事例となっています。