何十年も成長可能な技術系の企業
成長株投資の巨匠フィリップ・フィッシャーは何十年も成長し続けるような技術系の会社に投資して成功しました。
前回その銘柄選択の基準を15項目紹介しましたが、その中でも特に大事なポイントは、
・今後何年にもわたり成長をけん引する製品があるか
・何十年にわたり画期的製品を生み出し続けられるような独自の技術の基盤があるか
という点です。
今回は特にこの2点を重視し、今の日本株の中でフィッシャーの基準に合うのではないかと思われる候補銘柄を6つ紹介します。
フィリップ・フィッシャー編①「成長し続ける株の見極め方」を読む
サイバーダイン(証券コード:7779)
今後、「 サイバーダイン 」の成長をけん引しそうなのはロボットスーツ「HAL」です。同製品は人間の脳が発する微弱な電波を読み取り、その人の考え通りに動くという画期的なものです。脳性麻痺など体の不自由な人でも、脳→神経→筋肉→神経→脳という情報や運動のループがHALを通じて可能になり、これを繰り返すことで身体機能そのものが回復するというリハビリ効果が確認されています。すでに日米欧で医療機器として認可され今後本格的に普及していきそうです。
HALに搭載されている通信機能で世界中の使用者からデータが同社に送られ、それをビッグデータとして解析して一段と研究が深化・拡大していくことも期待されます。BMI(脳とマシンの連携技術)は最先端の技術分野ですが、同社はこの分野の先駆者として長期的に画期的製品を生み出し続ける技術的基盤を有していると思われます。
ペプチドリーム(証券コード:4587)
製薬業界では、簡単な構造の「低分子薬」全盛の時代から、2000年頃には「抗体薬」が主役の時代になりました。抗体薬は標的にだけ効果を及ぼすため効き目が良い上に副作用が少ないというメリットがある一方、構造が複雑なので開発費が高額になりやすいものです。
それに対して「特殊ペプチド」は抗体よりかなり簡単な構造なので、低コストで開発可能でありながら、抗体と同程度の効果があるという画期的な物質です。「 ペプチドリーム 」はこの特殊ペプチドを1000億種類人工的に作り、そこから薬ごとに最適な物質をスクリーニングするという画期的な技術基盤を有しています。その有望性を認めた国内外のメジャーな新薬メーカー18社が同社と提携しています。
現在はこれらの提携企業からの技術ライセンス料などがけん引して利益拡大中です。さらに、2022年にも同社が開発に関わった新薬が発売される見込みで、それ以降様々な大手製薬会社との提携から新薬が生み出されてくる可能性があり、同社は2020年代に時価総額4兆円になることを目指しています。
ユーグレナ(証券コード:2931)
ミドリムシの大量培養技術を世界で初めて開発したのが「 ユーグレナ 」です。ミドリムシは植物と動物の両方の性質を持ち、植物性と動物性の両方の栄養素を実に59種類も持つ健康食品です。
また、バイオジェット燃料としての研究も進んでいて2020年にも実現する見通し(会社予想)です。バイオジェット燃料は2030年までに国内だけでも2000億円以上の市場になるとの見方もあり、良質な燃料であるミドリムシ由来の燃料はバイオジェット燃料の主流になる可能性があります。
食品部門がけん引して2020年9月期には売上高300億円を見込みますが(会社予想)、それ以降はエネルギー部門が業績を一段と拡大させる可能性があります。
ウェザーニューズ(証券コード:4825)
民間気象情報サービスの世界トップ企業である「
ウェザーニューズ
」。
現在同社の業績をけん引するのは航海気象と航空気象です。航海気象では気象状況の変化に合わせて最適な航路を選択する情報を提供して、燃料代削減などに貢献しています。この「最適航路情報サービス」を提供している船は現在3600隻ですが2022年までに1万隻にすることを目指しています。航空気象については現在日本の航空機のほぼすべて、韓国・中国の航空機の約8割に情報提供しています。
同社の最大の強みは独自の気象観測インフラと、気象予報を元に解決策を提供するデータベースとシステムを持っていることです。解決策まで提供する民間気象情報サービスの歴史はまだ浅く、開拓すべき分野や顧客はまだ莫大に残されています。同社はこの有望な成長分野の第一人者として新たな収益源を次々生みだしていく技術的基盤を持っている会社といえます。
東レ(証券コード:3402)
「 東レ 」の本業である繊維は、国内では他社が軒並み縮小する衰退産業でありながら粘り強く強化に取り組み続け、今では世界中に広がる生産拠点、原料から生地・縫製までのサプライチェーン、三大合成繊維から人工皮革まで取り揃えた多様な商品群を持つ「3軸経営」を確立。さらにファーストリテイリングとの協業でヒートテックやウルトラライトダウンなど革新的な素材を次々生みだすなど、収益性と成長性を兼ね備える事業に育っています。
炭素繊維は40年もかけて事業化に成功し、高い品質が求められる航空・宇宙分野では独占的シェアを獲得していますし、今後は電気自動車向けの需要が大きく伸びそうです。
さらに、電気自動車の電池の重要な部材である「セパレータ」では世界2強の一角であり、この分野も今後成長加速する見通しです。
このように同社は当面業績をけん引していきそうな有望ビジネスを複数抱えています。
同社の強みは何十年という超長期の視点でじっくりと技術を磨いて事業を育てていける社風と体制であり、将来的にも有望なビジネスを生み育てていける技術的基盤を持った企業だといえます。
エーザイ(証券コード:4523)
「
エーザイ
」が開発したがん治療薬「レンビマ」は現在甲状腺がんなどに使われていますが、将来的に他のがんへの適用も進んで5000億円規模の大型薬になる可能性があります。これが当面の業績のけん引役です。
また、大型薬「アリセプト」の事業を通じて蓄積したアルツハイマー病に関する知見、データ、人脈などが同社の強みになっており、今後この分野から画期的な新薬が複数開発できる技術的基盤を持っているといえます。
現在はアルツハイマー病の原因がアミロイドβ、タウタンパク質といった物質であることが分かり治療法の研究が急速に進んでいますが、その中で先頭集団にいるのが同社で、現在10の候補物質を発見して開発を進めています。特に2つの候補薬はフェーズⅢまで来ており、2020年代にも発売にこぎつける可能性があります。
以上6銘柄を紹介しましたが、これらの銘柄はすでに株式市場での評価も高く、PERも高いものが多いです。もし購入を検討するなら、長期的に保有することを念頭にしながら、内容をよく検討した上でできるだけ安いところで狙いたいところです。
今回のテーマで取り上げた上場企業
サイバーダイン
ペプチドリーム
ユーグレナ
ウェザーニューズ
東レ
エーザイ