新NISA、どう使う? 会計士・山田さんの 投資ルール大公開 前編

フロッギー版 お金で得するオタク会計士チャンネル/ 山田真哉日興フロッギー編集部

2024年に始まった新NISA制度。制度開始から1年以上経ち、4月下旬からは高齢者向けの「プラチナNISA」や未成年向けの「子ども支援NISA」といった、NISAの拡充策が浮上し、話題になっています。

そこで今回はスペシャル企画! 「フロッギー版 お金で得するオタク会計士チャンネル」を連載中で、YouTubeチャンネル登録者数100万人超えの税理士・会計士YouTuberでもある山田真哉さんにインタビューしちゃいます! NISA制度の使いこなし術から投資スタイル、銘柄選びの考え方、これから伸びる業界など、カエルくんがたっぷりとお聞きします。

フロッギー連載の人気記事を振り返る!


山田さん、こんにちは! いつも分かりやすい解説をありがとうございます! 山田さんの連載は大人気で、特に定額減税遺族年金の見直しの記事は、多くの人に読まれたんですよ。

山田さん連載の読まれた記事ランキング

注:対象は2023年4月〜2025年4月公開の記事
公開日〜2025年4月30日までのPVデータ
出所:Adobe AnalyticsよりSMBC日興証券作成


そうですね。ランキングを見ると、投資ではない記事も読まれていますね。おそらく皆さんお金全般に興味があるのでしょうね。


自分にダイレクトに関わってくる記事は、読者の興味が高かったのだと思います。投資関連では、NISAの記事が上位に2記事ランキングしていて、読者の関心が高いことが伺えます。そんなわけで、山田さんのNISAの運用について、ぜひお聞きしたいです。

貯蓄好きの日本人を動かした「新NISA」


2024年から新NISAが始まりました。税理士・会計士である山田さんから見て、一番注目すべきポイントは何ですか?


非課税枠が年間120万円から年間360万円(成長投資枠とつみたて投資枠の合計)まで広がったことですね。上限が3倍になったのは大きいですよね。


一気に増えましたよね!


証券口座には税金の申告を楽にする特定口座がありますが、NISA口座は税金の申告について何も気にしなくていい点が最大のメリット。この点は国民にとって与えるインパクトが最も影響が大きかったのだと思います。そして正直、国がまさかここまで枠を広げるとは思っていませんでした。


確定申告などの煩わしいことを考えなくていいのは、大きなメリットですよね。


「日本人は貯蓄好き」と言われる通り、低利息時代でも貯蓄優勢でした。貯蓄は楽ですからね。貯蓄をしたいというより、ただ単に手間暇がかかるのが嫌で投資を避けてきたのでは、という仮説もあるくらいです。


確かに面倒なことは何もしたくないし、考えたくない。貯金なら増えることはないけれど、減ることもないですもんね。


だけど、新NISAはすごく良いらしい、という流れができた。そういった面で新NISAが与えたインパクトは大きかったと思います。


そうですね。煩わしいことを考えなくていいんだったら、ちょっとぐらいやってみようかな、と思えます。

昨年はうっかり⁉ 山田さんが新NISAで買ったもの


ちなみに、山田さんは新NISAで、どのくらい投資していますか?


つみたて投資枠は上限まで使っていて、毎月10万円をオールカントリーとS&P500に5万円ずつ投資しています。もう、超王道です。


王道のファンドに投資しているんですね!


だけど、昨年の成長投資枠は使いきれなかったんです。成長投資枠では個別株を買っているのですが、昨年は枠の半分ぐらいしか使えなくて。年末に残った枠で投資信託を買おうと考えていたのに、昨年の最終売買日を間違えていて、買えなかったんです……。


山田さんでも、そんなことがあるんですね。


せっかくの非課税枠ですから、今年は使い切ります!

2024年のNISA非課税投資枠を使いたい場合、国内株式の場合は、2024年12月26日約定分までが対象でした。2024年12月27日約定分からは、2025年非課税投資枠の利用となります。

山田さんの「つみたて投資枠」の運用成績は?


最近は株式市場の変動が大きくなっていて、評価額が下がっている人も少なくないと思います。山田さんの運用成績はいかがですか?


僕も新NISAのつみたて投資枠の成績は、若干マイナスです。でも、まあここで、どこまで気にしないでいられるかっていうのが大事だと思っています。投資を始めたばかりだと利益の積み重ねがないので、どうしても変動が激しくなります。だけど、僕はプラスマイナス30%ぐらいの変動は普通にあると思って、許容しているんですよ。


プラスマイナス30%も! 許容範囲が広いですね。


日経平均3万円が2万7000円になれば、ギャーってなるじゃないですか。新聞の報道で3000円も動いた、みたいに書かれることもあります。でも日経平均が7000円台だった時代を知ってる身からすると、そこまで騒がなくても、と。


投資を始めたばかりの方は「増やそうと思って始めたのに、減っちゃった」という気持ちになってしまうのかもしれませんね。


そうですね。株価の変動に慣れていなくて、貯金感覚がまだ強いと言えるかもしれません。

株もファンドも、人の成長と同じように見守る


僕は、投資する個別株もファンドも「人間のようなもの」だと思っています。一直線で成長する人っていないじゃないですか。


そうですね。成長には波があって、上がったり下がったり停滞したりしながら、長い目で見ると成長していく。


投資っていうのは、個別株もファンドも法人というか、人の集合体だと思ってるんです。その法人の成長にかけるかかけないのか? という話なので、人と同じかなと。だから僕は長期投資のスタンスです。


法人もファンドも人の集合体……言われてみれば、確かに!


そもそも、投資って、自分自身ができないことを他人に託す行為だと考えているんです。例えば手元に100万円あったら、自分でビジネスを始めて103万円にするのか、自分よりも優れている人や成長の伸び代がある人に託して103万円にするのかを考えます。


自分でやるのか、人に託すのかどちらか、という考え方なんですね。


例えば、僕が英語がペラペラなら、その英語力を使ったビジネスをしますが、英語力は全くないので、その代わりにS&P500を買ってるという感覚なんですよ。僕が今どれだけ頑張っても、S&P500のような企業を経営することはできないので。


だから投資すると。面白い考え方ですね! ただ、企業によっては成長していく企業もあれば、停滞したり衰退したりしている企業もありますよね。山田さんは、どのように成長する企業を見極めているんですか?

山田さん流、銘柄選びの3つのポイント

①伸び代がある業界・成熟した業界のトップ企業を買う
②知見のあるエンタメ業界から銘柄を選ぶ
③暴落時に購入する

①伸び代がある業界・成熟した業界のトップ企業を買う


成長する企業というか、業界がベースだと思っています。シンプルにその業界に伸び代があるかをまず見ます。そして、個別株に関しては業界のトップ企業を買うことが多いです。


業界のトップ企業! やっぱり王道ですね。


僕自身が小さい会計事務所の経営者だから分かるんですけど、なんだかんだビジネスはヒト、モノ、カネがある大企業が有利なんですよ。優秀な人も業界一番手に行くし、他業種がその業界に組もうとしても、トップ企業から当たりますよね。車とコラボしようと思ったら、まず「 トヨタ自動車 」にまず話を聞きに行くじゃないですか?


確かに、一番手がダメなら、二番手・三番手の企業に当たるかもしれません……。


トップ企業は有利ですし、業界1位・2位の企業がそれ以下と入れ替わることって、実はなかなかないんですよね。もし、変わるとしても急には変わらない。だんだん下がっているなと感じたら、銘柄を入れ換えればいいわけで。


じゃあ迷ったら、業界トップ銘柄を買ったほうがいい、と考えているんですね。


そう思います。はたから見たら、ズルいくらい強いですから。


ちなみに山田さんが新NISAで投資した、業界トップの銘柄はありますか?


昨年成長投資枠で買った「 セブン&アイ・HD 」ですね。すでに約28%プラスになってます。


すでに3割近く上がっているんですね! 海外からの買収などが話題になりましたね。


コンビニ業界では一強で、今後買収される可能性もある。日本だけでなく海外にも拠点があって、インフラとして成立する業界は強いのではないでしょうか。コンビニだっていつかはなくなってしまうかもしれないけど、来年なくなる、という話ではないでしょう。


コンビニが来年になくなるなんて、考えられませんね。


もしコンビニエンスストア業界が衰退するとしても、20年後とか30年後のことでしょう。その頃に、他の小売業と同じような運命になるんだろう、と長期で考えられますよね。


やっぱり長期スパンで判断されているんですね。他にも、NISAで買ったもので業界トップ企業はありますか?


旧NISAですが、回転寿司業界トップのスシローを運営する「 FOOD & LIFE COMPANIES 」を持ってます。100万円で買ったのが、200万円ぐらいになってますね。


倍ですか⁉ うらやましいです!


あとは、NISAで買ったものではないですが、昔から持っている銘柄で言うと、「 キヤノン 」、トヨタ自動車などもありますね。


いずれも業界トップ企業ですね!

②知見のあるエンタメ業界から銘柄を選ぶ


ちなみに山田さんは過去の記事でエンタメ系の銘柄を持っていると書かれていましたが、最近の調子はいかがですか?


今も持ってますし、新たに投資をするときは、やはりエンタメ中心ですね。僕はエンタメ業界向けの会計事務所を経営しているので、業界のことが分かります。何も知らない業界だと、どうしても当てずっぽうになっちゃうので、知見のある業界にまず注目します。


新NISAで投資したエンタメ銘柄はありますか?


エンタメ業界で、「 ANYCOLOR 」と「 カバー 」という、VTuber関連のトップ2を新NISAで買いました。すでに、ANYCOLORはプラス67%、カバーはプラス35%です。日本発のエンタメで世界に出てるところを評価してますし、なんといっても圧倒的に利益率が高い!


ANYCOLORやカバーは、フロッギーの記事でも取り上げているんですよ。利益率が高いんですね。

ANYCOLORの2024年4月期の営業利益率は38.6%、カバーの2025年3月期の営業利益率は18.4%です。日本取引所グループの決算短信集計結果【連結】(東証のプライム・グロース・スタンダード合計)によると、2024年3月期の全産業の営業利益率は6.72%です。

ANYCOLORの決算解説の記事を読む
カバーの社長インタビュー記事(前編)を読む
③暴落時に購入する


ちなみに、この2銘柄は、昨年8月の暴落の時に買ったんですよ。暴落って長期保有勢にとっては、いわゆるバーゲンセールですよね。


欲しいものを安く買えるチャンス、とも考えられますね。


先月(4月)の下げのタイミングにも3、4銘柄ぐらい指値を入れたんですけど、買えたのは1銘柄だけでした。もっと下がると思って、指値を低くしすぎたと反省しています。それで買えたのが「 スカパーJSATHD 」ですね。


意外な企業ですね! スカパーはどこを魅力に感じたんですか?


宇宙事業です。スカパーは、もともとエンタメの会社として注目していたのですが、今は宇宙事業も行っています。宇宙はこれから各国が力を入れていく分野で、そのうえ新規参入しにくい分野です。だから、すでに先行しているスカパーが、比較的有利だろうなと。


スカパーって放送事業のイメージだったんですが、山田さんは宇宙事業に魅力を感じてるんですね。

東洋経済新報社の会社四季報によると、2024年3月期の事業構成はメディア事業が52%、宇宙事業が48%で、宇宙事業が約半分を占めています。


そうなんです。しかもスカパーはキャッシュフローが安定して、プラスで入ってきています。ちなみに、現在の株価は1196円ですが、僕は1025円で買ってますね。約17%安い時に買えてます。


すごい。1ヵ月で約17%のプラス!


他にも、買いたい銘柄がたくさんあったんですが、さらに下がるかもと思ってしまい……。


暴落時ってまだ下がるかもと思ってしまって、なかなか買えないですよね。フロッギーの編集メンバーでも、5万円の金額指定で、1銘柄だけ買ったと言っている人がいました。


5万円と金額を指定して買えるんですか?


はい、そうなんです。フロッギーや日興イージートレードのキンカブでは、5万円で買える株数を買う、ということができるんです。


へえー。それは面白いですね。

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長期で投資するのは、精神的にラクだから


お話を伺うと、決算情報を細かく見て短期で投資をする、というよりも長期的に投資されている印象です。


そうですね。結局、投資は長期でやったほうが精神的にラクっていうのはあるかもしれないですね。今日明日で、結果を出さなきゃいけないって考えると、大変じゃないですか。


大変ですね。


そもそも僕の本業である会計事務所の仕事では、毎年何かしら成果を出し、顧客に対しきちんと対応をしなきゃいけない。そして、毎週配信しているYouTubeに至っては一本一本が勝負という状況にあります。こけたら登録者も減りますし、如実に再生数に反映されます。


毎週、最新ニュースを盛り込んでアップし続けていてすごいな、と拝見しています。


ありがとうございます。だから、投資もそんなシビアな感覚でいるとしんどいなって思うんです。投資だけは10~30年のスパンで見ているからラクなんです。長いスパンで見れば、世界の人口は増え、AIのような技術革新が起こると考えれば、投資の成績でずっとマイナスが続くことは考えにくい。

前編では、新NISAで買った銘柄や、銘柄選びのポイントを教えてくれた山田さん。後編では、山田さんの保有する19倍になった銘柄や、売り時、決算チェックのポイントなどについて、さらに深堀りします。

次回は6/24(火)配信予定です。